子どもは、タオルやぬいぐるみなど肌触りのよいものを肌身離さず持ち歩くことがよくあります。このように、母親以外のものに愛着を示すことは、【移行対象】と呼ばれています。
移行対象の概念を最初に提唱したのは、精神分析医のウィニコットです。
移行対象物には、明確な定義はありませんが、以下の特徴を持ちます。
@出現が1歳前後。
A一年以上続く。
B【慰め】を与える機能がある。
C乳児によって選択されたものである。
D乳児の身体の外部のもの
この移行対象物は、乳児がひとりで寝たり、見知らぬ場所に連れて行かれたりする時など、不安に打ち勝つために、安心感や慰めを与え乳児を回復させる機能を持ちます。
【母親】という物理的な対象がそばにいてくれた時は、乳児が抱く不安や恐れなどの感情が母親によって解消されていた訳ですが、乳児が外部の現実社会へひとりで関わりを持ちだす時期になると、いつも母親が守ってくれるという訳ではありません。
つまり、移行対象物とは、母親不在で外部社会に対して不安や恐れを抱いていた時期に出現しやすく、対象物としては、母親のような心地よい肌触りのものであると考えられています。
【愛着…サルの実験でも】のページでもご紹介致しましたように、乳児にとって、
タオルやぬいぐるみや毛布のような柔らかい対象は魅力的なものであるという訳です。
さて、実際には、移行対象物のある子どもとない子どもがいます。一体、何が違うのでしょう?
移行対象物のある子どもはない子どもに比べて、問題行動が多い傾向があります。
また、
施設で育てられ、母親との関わりが一切なかった子供には、移行対象物がないといわれています。
それでは、移行対象物のある子どもの母親と無い子どもの母親にはどのような違いがあるのでしょう?
ある調査によれば、
移行対象物を持つ子どもとその母親の関わりは、移行対象物を持たない子どもと母親とのかかわりに比べ、関わりが密接しているともいわれています。
また、
何かしら特定の仕事を持つ社会性の高い母親の子どものほうが、移行対象物を持つ傾向が高いそうです。移行対象を持つ子どもの母親、子どもと一定の距離を保つ関わりをしているのに対して、移行対象物を持たない子どもの母親は、子どもと密接したかかわりをしています。
母親が、子どもと適度な距離をおくと子どもの不安が高まり、それが、移行対象物が現れる契機になっているようです。
私たちは、母親の手で子どもとの愛着を形成することは、子どもの社会的な成長につながる…と考えております。
触れる触れられることについて、今一度見つめなおす機会とも考えます。
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